素人には難しい擁壁づくりもDIYで可能になるジオセルのご紹介
更新:2022年12月1日
今回は実際にジオセルを使った擁壁を作った際の実例をご紹介させていただきたいと思います。
まずは造成・擁壁を作成する前の地勢について簡単にご説明します。
今回の土地は上段の土地と下段の土地二つの土地を造成することで土地の利用価値を上げるために工事を行っています。
まず、上段の土地は接道する道路より1mほどひな壇になっていた土地を前所有者が道路側にスロープを作り出入りできるようにしていたため、実際の土地として使用できる面積が非常に少なく、無駄が多かった土地でした。
この写真は敷地内から右側に道路を見た位置から撮影しています。
この土地自体は周辺地価に比べると非常に安く購入できる土地でしたが敷地面積の三分の一がスロープ状態だったことや道路側の道幅が2.5m未満の道路で接道が悪いため、使い勝手がいまいちだったのか中々買い手が決まりませんでした。
しばらくして下段の隣地(写真上部の単管パイプが立っている土地が上段の土地)の売り出しが始まりましたがこちらの土地も間口が狭く長細い土地で資材置き場としても面積が狭いため、買い手が中々つかず1年程度売主が決まらずそのまま売りに出されていました。
元々、当社はこの近くに倉庫があるため、近くで駐車場 および 資材置き場に使える土地を探していた為、この上段と下段の土地に関しては興味がありました。
ただ、この状態ですとどちらを利用するにしても中途半端な状態でしたので4m道路に接道している下段の土地に上段の土地に上がるためのスロープを作成し、上段の土地は既存のスロープを上段の高い場所の残土を平らにして上段の土地全面を資材置き場として利用できるように地勢を変える工事を自社で行うことを前提とし上段、下段双方の土地を購入しました。
今回購入した土地の総面積は上段部が327㎡、下段部が124㎡となり合計でも500㎡未満の面積となります。
また、制作する擁壁部の最大高さが2m未満の造成ですので当社本社がある神奈川県相模原市の建築確認が不要という事もあり、予算の都合上、自社で造成できる技術があることが分かったため、造成から擁壁作成まですべてを自社で施行することにしました。
また、造成・擁壁を作成する前に上部写真に写っている上段下段それぞれの残地物(主に植物や簡易擁壁の安全鋼板など)のすべて撤去した後の造成開始時に撮影した写真を掲載しつつご説明させていただきます。
まず、工事時期としては当社が社員1名という事もあり手伝ってもらう人手の都合上、短期間での集中工事を想定し、土日もしくは大型連休中に作業を行うという事を前提として作業を行っています。
作業初日は上段の土地から下段の土地に移動をしやすくするため、上下段の土地の境界にあったブロックを撤去し、簡易的なスロープを作成しました。
また、擁壁の高さを2m未満にする必要性があったため上段スロープ部に上段の高くなっている場所の残土を寄せていき、上段部全面がある程度水平になるよう整地を行いました。
また、作業日程が日曜日、大型連休中で行うことを前提とすると資材購入先は概ねすべて休みになってしまうため、上下段共に必要がない残置物の撤去を事前に終わらせた後、工事中に使う砕石(RC40)をまとめて購入し敷地内に仮置きしておきました。
部材を仮置きしておくことで日曜・連休中の部材調達ができない問題を解消しておきます。
次に二日目から五日目までは道路側の擁壁を作成していきます。
今回は下段のスロープで上がっていく側面の土壁になる部分10m(最大高さ2m未満)と上段の道路側20m(高さ2m未満~1mぐらい)全長30mのジオセル擁壁を作っていきます。
まず、上部写真のようにジオセル自体を積んだ時に地盤が沈んだり、滑って崩れないようにする為、地面から15cm程度掘り下げます。
次に 写真のようにジオセルを展開し、水平を見ながらジオセルを据え置き、ハニカム状になったジオセルの帯の中に充填材(ここではコンクリート砕石:RC40)を入れてエンジンプレートで転圧します。
転圧が完了するときれいに平らになるのでこの上に展開したジオセルを5cmセットバックした位置に載せていきます。
基本的にジオセルでの擁壁づくりはこの繰り返しです。
次にジオセルの最大の特徴として残土をジオセルの充填材として再利用していきます。
上の画像は途中からジオセルの充填材に残土を利用しながら積み上げています。
残土を利用する場合、一番下の段から実際に積み上げる段数の3分の1程度は砕石等を利用してください。残土だけで積み上げて擁壁を作成すると構造体としての強度が維持できません。
また、残土はエンジンプレートで転圧しても粘りがありプレートの転圧部の部分にへばりついてしまいます。
もし可能であれば表面に砂などをしっかり巻いてあげることで残土のへばりつき防止になります。また場合によっては残土をかぶせた後に手で押し込んだ方が早い場合もありますのでやりやすい方法で転圧してください。
基本的にはこの繰り返しを必要な高さまで行っていきます。
上の写真は上段部の通路側擁壁の完成になります。
ジオセル擁壁とひな壇の土壁の間は砕石か余った残土で埋めています。
ちなみにジオセル擁壁に残土を入れた部分は植栽などもできますのでタマリュウやりゅうのひげなどを植栽すると簡単に緑化することも可能です。
同じ要領でスロープ側の土壁になる部分をジオセルで擁壁を作成しました。
最終的には道路側と反対の隣地との境界線にもジオセルで擁壁を作成しました。 この部分は残土よりも砕石がだいぶ余っていたのですべて砕石で組み上げていき、残った残土を上からスロープ状に慣らすことでおおよその造成は完了しました。
当工事についてはジオセルの必要想定量が少なく、表土の掘り起こしによる地盤沈下を防止するため以下のように路盤強化を行うため、ジオセルを全面に敷き詰めています。
ただ、路盤の強度に関してはこれでも十分ですがこのままではスロープ部の傾斜値が7度となり、勾配がきつく、自動車の車両重心によっては駆動輪が空転して登れないため、ジオセル全面の路盤強化後、全体をアスファルト舗装で駆動輪の空転防止処置を行っています。
ひな壇部のアスファルト舗装後の写真(ひな壇部は透水する開粒アスファルトを使用)
造成からジオセルの擁壁作成まで全体としては以上となりますが予算面でいえばコンクリート擁壁と地勢の造成をする費用で 地勢の造成+ジオセル擁壁作成+ジオセル路盤強化+アスファルト舗装 迄すべて捻出できたので費用面での負担はだいぶ抑えられたと思います。
今回の作業内容は一例となりますが擁壁があることで土地全面の空き領域を減らすことが出来た為、時間をかけてでも費用を抑えて工事を進めていきたい方にはぜひおすすめの工法ですのでジオセルに興味がある方は是非ご検討ください。
2022年12月1日追記
現状の工事から3年経って当工事に対する感想を述べたいと思います。
まず、ジオセルについての評価として路盤強化の材料としての効果については十分な効果を上げていると思います。 理由として、アスファルトの仕上がり厚に関しては50mm程度となっていますがアスファルトの割れなども無く、現状では十分な路面強度を確保できているようです。また、基礎路盤の強度が高くなることでアスファルトの厚みを減らすこともでき、砕石等の費用が圧倒的に安いことから舗装材料費を削減することも可能です。
次に擁壁としての利用としても今回のような簡易擁壁として利用するのであれば十分な強度を確保でき、擁壁組み上げの近くまで車両を寄せた場合でも全く問題ない強度を維持できている為、事前準備をうまく進めれば十分DIYなどでも使用することは可能だと思います。
今回のはあくまで自社の擁壁づくりを参考としましたが路盤強化や簡易擁壁づくりをご検討いただいている方がいましたら当社へ是非ご相談いただきますようお願いします。