お知らせ

「HDD・SSDの物理破壊は有害物質が飛散する」と記載し、物理破壊によるデータ消去を推奨しない理由

2023/01/21

 最近HDDやSSDなどの物理破壊を検討されるお客様からの問い合わせので「HDDの物理破壊を行うと有害物質が飛散するのか?」という問い合わせをいただいた為、今回はそちらについて当社にて考察した内容を記載していきたいと思います。

この記事に関する大まかな目次

HDD・SSDなどの電子機器に有害物質は使われているのか?

 この「有害物質が飛散する・・・・」のくだりは2023年1月の時点でリネットジャパンのパソコン無料回収公式HPに書いてあるHDDやSSDなど電子記憶媒体に記録されているデータを削除する際にHDDを取り外し後、物理破壊を行う事は「有害物質が飛散する恐れがあります」という記述がされており、当社をご利用いただくお客様でこの点について疑問に思ったことからご質問を頂きました。

 この記述の真偽についてお答えすると、2006年より前の家電品全般については一部の有害物質が使われていた時期があるという事が分かっています。

 この2006年についてはEUで施行された「RoHS指令(ローズ指令)」という、特定の有害物質の使用を制限する法律が制定されたことが節目となっており、これより前は日本向け製品の一部で使用されていた時期があります。

 ただ、これ以前でもEU向けの一部商品では輸出が禁止されていたため、同じスペックのものでも日本向け製品と海外向け製品の値段が違う事もあったそうで現在はこの法律が制定されて以降は日本国内の企業が製造する電気製品でそのような物に抵触するものを使用した商品は製造されないようになりました。

 また、RoHS指令で主な有害物質として取り上げられるのがカドミウム、鉛、水銀、六価クロム及びそれらの化合物、PBB(ポリブロモビフェニル)、PBDE(ポリブロモジフェニルエーテル)など6種類が有害物質として列挙されています。

 この中でパソコンで使用されている可能性があるのはメッキ、顔料、電池、テレビのブラウン管などに含まれるカドミウム、ハンダに含まれていた鉛や基板表面のクロメート皮膜などに利用されていた六価クロムなどがあげられますがハンダの鉛については1998年にNECが最初に鉛フリー化に関する取り組みを始め、2002年度に国内家電主要メーカーすべてが鉛フリー化を進めており、六価クロムについては同様の時期から減らす動きがあり、代替の三価クロムや代替皮膜などに置き換わりが始まり、RoHS指令が制定された2006年7月にはほぼそれらは使用されていないものと思われます。

(参照[パソコンにおける有害化学物質対応の取り組み強化について]http://www.nec.co.jp/press/ja/0603/2301.html

(参照[最近の鉛フリー、六価クロムフリーの代替処理事情]http://www.sawa-mekki.co.jp/pdf/tec-rep07.pdf

(参照[RoHS指令とは}https://kaden.watch.impress.co.jp/cda/word/2008/10/08/3017.html#:~:text=RoHS%E6%8C%87%E4%BB%A4(%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA%E6%8C%87%E4%BB%A4)%E3%81%A8,%E3%81%99%E3%82%8B%E8%A6%8F%E5%88%B6%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82

 

 このことから、2006年より前に製造されたHDDであればそのような物が使われている可能性がありますがそれらの2006年以降はRoHS指令に合わせて製造を行っているのでこれらについては心配する必要性はほぼないと考えられます。

 ただ、リネットジャパンが記載するに有害物質が飛散するという表現については恣意的に消費者の不安をあおり、これらの記述について本当に必要であったのかという部分について疑問が残ります。

 ではHDDやSSDについては物理破壊をした場合に本当に有害物質が飛散する可能性があるのか下記に記載していきたいと思います。

そもそもHDDやSSDなどの電子機器は物理破壊すると有害物質は飛散するのか?

 それではHDD(ハードディスク)やSSD(ソリッドステートドライブ)などの電子機器を物理破壊した場合、RoHS指令で定められた有害物質は飛散するのでしょうか?

 まず、2006年以降については電子機器製造時のほとんどの製品に使用されている可能性は限りなく少なく、ほぼないものと考えられます。

 次にSSDについては1993年頃の最初期のPCMCIA準拠のコンパクトフラッシュなどはわかりませんが近年のHDDの代替記憶媒体として利用されるようになったSSDやM.2と言われるNAND型メモリーについては2006年以降に搭載されるようになった為、実質的にほぼ有害物質は利用されていないと思います

(参照:https://akiba-pc.watch.impress.co.jp/docs/sp/1255542.html

 次に2006年以前については使用されている可能性はある為、全く有害物質自体がないことはありませんが日常的かつ継続的に作業を行うわけでもなく、健康被害が出るほどの有害物質が発生する可能性は少ないのではと思います。   その為、一部は記載内容にも合致すると思いますが恐怖をあおるほどのものではないように感じますし、どちらかというと自分自身で物理破壊作業を行ったとした場合、慣れていない人が作業をして怪我するリスクを負う可能性の方がむしろ高いのではと感じます。

 少なくとも、2006年以前のHDDなどであった場合でも個人レベルの数台のHDDを物理破壊するレベルの場合、データを復元できない形にするだけであれば、やり方次第ではそれほど問題になるほどの有害物質が飛散する可能性は少ないのではないかと思います。

HDD(ハードディスク)の適切な物理破壊方法とはどういう方法なのか?

 では、個人の方で確実なデータ消去を行うためにハードディスクを物理的に破壊したい場合、有害物質が出ない方法と言うのはあるのか?その辺りも考えていきたいと思います。

 例えば、データの復元が出来ないようにするのであればデータ保存されている蓋部分の特殊ネジを外し、複数枚あるディスク部分を取り外した上で折り曲げや切断処分する方法やプラッタと言われるデータ読み込みを行う部品などを曲げるなりすればほぼデータの復元やHDD自体の再利用すること自体を不可能にさせることは可能です。

 また、慎重になるなら記憶媒体のディスク自体を複数回に分けて処分すればほぼ復元は出来ません。

 それ以外にもHDDの記憶媒体ディスクの表面をやすりなどで傷をつけたりすることで復元自体は困難を極めますが・ハンダ部分に鉛やメッキ部分にカドミウムなどを使われている可能性を考えると金属粉塵が出る可能性があるので正直お勧めはしません。

 SSDについては有害物質が出る可能性は極めて低いと思いますが、基板上の黒いチップ部分にデータを保管している為、これらすべてを破壊する必要性があるのでニッパーやドリルなどで破壊する方法などで適切に破壊することも可能です。

 上記のように情報が記憶されている部分だけを適切に破壊すれば有害物質が飛散する可能性は限りなく少なく、情報漏洩されるリスクも限りなく少なくすることも可能ですので一つの方法として検討いただくのもいいかもしれません。

HDD・SSDのデータ消去は物理破壊だけでは情報漏洩する可能性があるのか?

 次に一部のHDD・SSDの廃棄代行業者が物理破壊だけではなく、データの複数回上書き・強磁気によるデータ破壊など複数組み合わせることが復元されない方法と言われていますがそのような組み合わせをする必要があるのでしょうか?

 当社の考えとして、以下3つのサイトが推奨する廃棄時の適切なデータ消去方法を参考にしています。

参照先:総務省「国民のためのサイバーセキュリティーサイト」HPより参照

  リンク先:「廃棄するパソコンやメディアからの情報漏洩(ろうえい)」

参照先・1:一般社団法人「パソコン3R推進協会」HP参照

リンク先:データ消去について

参照先・2:一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA) HP内・PDFファイル参照

リンク先:パソコンの廃棄・譲渡時におけるハードディスク上のデータ消去に関する留意事項 

 これらを参照すると一般的なデータ消去であればこの中のどれでも行えばデータ復元自体は難しいものと考えられます。

 ただ、当社の考えとして物理破壊以外の完全データ消去を行う方法は現時点で非常に有効であると思いますがAI技術などが発展し、現時点で復元できない状態であった場合でも今後どのような復元方法が開発されるかわからない為、物理的に破壊を行い、将来的にどのような復元を試みても製品として使用できない状態にしてしまう方が安全性は極めて高いと思います。

 また、上記で上げるデータ複数回上書きや強磁気などによるデータ破壊などを行わず、HDDの記憶媒体ディスクにデータが残った状態で物理破壊を行った場合でも現実的には相当な復元費用をかけることになる為、国家機密や企業の新商品開発データなど相当な利益が見込めるレベルでなければ現実的にHDDを物理破壊した時点でほとんどのHDDは復元する意味をもたないと思います。

上記に記載したディスクのように破壊した上で複数回に分けて処分を行う事で実質的にはデータ復元は費用面など様々な観点から見ても実質的に復元は不可能なレベルにあると考えられ過度なデータ消去は時間と労力の兼ね合いから見てもそこまで必要な処理は一部の処理方法に限るものと考えます。

物理破壊したHDD・SSDを自分で処理する場合はどうすればいいのか?

 また、物理破壊した後のHDDなどの処分方法を適切に行う際にはどうすればいいのでしょうか?

 まず、一般の個人のゴミであれば東京都や神奈川県の多くの市町村ではそれぞれの分別処理方法によって違いますが多くは金属資源ごみや不燃ごみ、一部自治体で可燃ごみなどで引取りを行っているようです。

 また、多くの市町村は30cm以内の大きさは粗大ゴミ扱いにならない事からほとんどの市町村で通常のゴミ出しで行える処分が行えると思います。

 但し、通常のゴミ出しで廃棄することが出来ますがデータ処理を行った上でゴミ出しを行わないと資源ごみを持ち帰る人もいる為、適切なデータ処分を行う必要性もあり、再利用が出来ない形にしておく必要性はあると思います。

 また、法人が所有するHDDやSSDに関しては一般廃棄物での処理では多くの市町村では行う事が出来ず、産業廃棄物の取り扱いになる為、それらに基づいて適切に処分する必要性があります。

 このように処分の方法は個人か法人で変わりますが物理破壊を行った後でも相当の有害物質が排出されるものであれば各市区町村が引取りを拒むことがあるはずですが実際にはほとんどの市町村で通常ごみの範囲で処分できることから適切なルールと適切な処理施設で処分を行う事で環境面への配慮も十分に行えることが分かると思います。

リネットジャパンが物理破壊を推奨しない理由は?

 ここまで記載してきて仮に一定の物理破壊を行った場合に有害物質が出る可能性があったとして、破壊方法や適切な処分方法を行う事でそれほど大きな問題があると言えないという事が分かりますがなぜリネットジャパンではそのような記述をしているのでしょうか?

 この部分についてはリネットジャパングループ全体として見た時に様々な業態を通して、リユース・リサイクルを行っていることが関係しているのではないかと思います。

 まず、リネットジャパンは大きく分けて以下の四つの事業を行っているようです。

  ①リネットジャパンリサイクル(小型家電リサイクル事業)

  ②ネットオフ(リユース事業)

  ③外国人事業実習生の現地送り出し・管理団体事業

  ④障碍者向けグループホーム事業

 大きく分けると上記の4つのグループ会社から構成されており、それぞれのグループ事業と連携して事業を行っているのが特徴の会社になります。

 その上でリユース販売事業を行うネットオフでは様々なリユース商品を販売しており、リネットジャパンの利用規約:第1条にも記載してある通り、「リネット上で提供する宅配便を活用した使用済小型電子機器等の回収および再資源化(リサイクル)・再使用(リユース)サービス」を提供するものと記載され、第13条では「弊社へ引き渡した後、再資源化(リサイクル)・再使用(リユース)されることに対して同意する物と記載されていることからリユースできるものについては出来る限りリユースを行い、中古商品として販売しているのではと考えられます。

 リユース先については様々なリユース先があると思いますが国内向けリユース以外にも海外向けリユース事業を行っている場合は東南アジアやアフリカ諸国など発展途上国などに輸出しているケースもあります。 

 この海外向けリユースについては様々な販路があると思いますがパソコンなどの需要もかなりあるらしく、各国の現地バイヤーから言わせるとHDD・SSDなどが無いパソコンを輸入すると発展途上国では部品の購入だけで仕入れる中古パソコン数台分の部品代がかかる場合があり、出来る限りHDD・SSDなどが残った状態のパソコンを購入したいという要望が強くあるという話を聞いたこともあり、海外向けリユース商品として取り扱うのであれば物理破壊されHDDなどの記憶媒体が無くなってしまうよりもHDD等の記憶媒体が取り外しされていない状態で引き取り出来る方が都合がよいという側面があるのかもしれません。

 その為、リネットジャパンで推奨するデータ消去サービスは「Blancco」と言う上書き消去ソフトを利用する事を前提としており、物理破壊などの消去方法を依頼者側が選択することはできません。

 これらはリネットジャパンに聞いたわけではありませんのであくまで推測でしかありませんがこれらを総合的に判断するとリユースでの販売を前提とし、リユース出来ないものはリサイクルする方法を行っているのではないかと推測されます。

データ消去ソフト後の記憶媒体の再利用と物理破壊処理 それぞれの安全性は?

 上記のようにリユース販売が前提として考えた場合、データ消去ソフトで消去後、再利用されることを前提とした場合、それらの安全性は担保できるのでしょうか?

 これについては正直な話、データ消去ソフトにしても物理破壊にしても適切に行われているのであれば現状では「データ修復を行うこと自体が難しい」もしくは「データ復元するには費用が掛かりすぎる」為、どちらかが適切に行われていれば国家機密や企業の機密情報などではない限り問題はないと思われます。

 但し、2019年に起こった刑事事件にもなった「神奈川県庁HDD転売事件」のように適切に行われていた事を証明していたにもかかわらず、転売されていたという一見ありえないような事件ではありますが適切にデータ消去が行われない可能性もあります。

 あくまでこれらはそこに関わる従業員のモラルによるものが大きいと思いますが証明書があってもデータ消去自体が行われていないケースもありえることが証明されました。

 特に神奈川県についてはこの事件以降、県庁や県の関連施設毎に物理破壊装置を導入している場所もあるらしく、リース会社で借りているPCでも職員立会いの下、取り外しを行い、職員自ら情報漏洩しないようにHDDやSSDなどの記憶媒体を物理破壊するといった話もあります。

 このような観点からみても、本当に重要な事なのはデータ消去を行う行為であることは言うまでもありませんが、人為的悪意を無くすことはやはり難しく、確実にデータ消去されたこと担保するにはご自身で破壊するか目の前で確認することが非常に重要であるという事が分かると思います。

 また、リユース・リサイクルを含めたデータ消去を行う事業者全般に言える事としてデータ流出による免責事項は仮に事業者側へ瑕疵があったとしてもサービス利用料金の相当額以内の保障以外しないと記載されている場合もあり、データ消去の確実性が担保されていないように感じます。

 これらの事からわかる通り、データ消去を依頼し、証明書が発行されたとしてもその確実性はあくまで事業者側の信用を前提とし、業者側の性善説だけでしか担保されていないということになり、これらのデータ消去方法では業者へHDD・SSDなどの引き渡し後の確実性が担保されていると言えないのが多くの業者が対応できる実情だと思います。

確実なデータ消去の方法は「方法」ではなく「確実性」

 このように事業者側に有利な保証を考えた場合、HDDやSSDなどの電子記憶媒体がそのまま使える状態で残るのはリスクを感じられることから当社ではお客様の目の前で短時間で確実に再利用できないようにし、お客様の目の前で確実な物理破壊を行うデータ消去方法をお勧めしています。

 一番はご自身で確実に破壊することが重要と考えられますが電子機器を含めそのような作業自体が全くできない方もいらっしゃると思います。

 そのようなお客さまでも安心して目の前ですぐにデータ破壊されたことが分かるサービスとして当社では「お客様の目の前で環境に配慮した様々な記憶媒体の物理破壊が出来る出張代行サービス」の提供に力を入れております。

 また、万が一取り外しされていないHDDやSSDもお客様の目の前で外して破壊することも可能ですのでデータ消去の確実な消去をご希望される場合は当社「HDD・SSD等電子記憶媒体出張物理破壊代行サービス」のご検討を頂ければ幸いです。

関連記事を読む